制作日誌

「6周年前夜祭」朗読劇の制作風景③

「6周年前夜祭」のアーカイブ配信最終日の8月31日が、近づいてまいりました。

※私はレイチェル人形(!?)で出演しています。とても楽しい楽しいイベントでした!

今回はいよいよ、動画編集の話に入ります。

実は動画制作のスキルアップは、少し前から「何か楽しいことができないかな」と思い、少しづつ取り組んでいましたが、今回のような長い作品を一本仕上げるのは、さすがに初めてのことでした。
その試行錯誤は大変ではありましたが、作業そのものは、とても楽しいものだったと感じています。

■背景について

さっそくですが――おそらく今回の動画の一番の特徴は、生身の声優さんの演技に背景を合成するかたちの演出にあります。

技術的には、朗読劇をグリーンバックで撮影した上で、背景を後から合成することになるのですが……その際にどんな背景を作るべきなのかが、もう最初に考えるべき課題にして、最大の課題でもあったように思います。

一体、朗読劇をする実写の人物を前に、違和感ない背景とはどういったのものか……?

撮影前から、いくつか試作して考え込みました。

例えば、(これは撮影後のものにはなるのですが)この告知動画も今回は私が制作しているのですが、こちらはかなり実写寄りの絵を背景にして、本番の映像よりも色をきちんと入れた動画です。

こういう方向性もあり得ますし、告知の場合は、これが良かったと思います。ただ、やはりストーリーの演出ともなると、少々弱いのですね。

ひとまず、リアルな映像やカラフルに色がついたもの、立体的な背景なども試していったのですが……なかなか朗読劇の、あの舞台らしいライブ感が得られません。むしろ、労力がかかる割に、“コラ画像”や古くさい合成動画のような印象の仕上がりになりかねませんでした。

そこで私は――実際の朗読劇とは、どんな雰囲気で、どんな舞台セットで行われるものなのかに立ち返って考え直してみることにしたのです。

まずは舞台上での朗読劇は、特にセットがシンプルで抽象的なものが多いように思います。それは朗読による「声の表現」を邪魔せず、観客の想像力を掻き立てる場であるべきだからです。
また、ライブならではの勢いも大事です。綺麗でカラフルな映像を足すと、洗練された印象になるのですが、それがどうにも薄れていくのです。

そこで最終的に行き着いたのが――「手描き感のある(ほぼ)モノクロの背景絵」でした。

「朗読劇」における舞台感を再現するには、背景はシンプルで、なおかつ少しザラザラとした実写とは違う勢いのある質感を出したほうがいい。そういう判断でした。

――とはいえ、実際の動画に合成してみるまでは不安でした。笑

ゴリゴリと必死で描いた背景を、収録後に恐る恐る動画に合成して――「あ、ハマった」と思った時の安堵感は忘れられません。

■実写になじませる

さて――思いのほかハマった背景の方針ですが、やはりそれだけでは実写との“なじみ”が、どうにも少しだけ足りないのです。
どうしても映像の枠に収めると、二次元の背景と三次元の声優さんのギャップが最後の最後で浮かび上がって、どこかチープになってしまうのでした。

その理由を私なりに分析すると、おそらく私たちが普段見ている実写映像は一秒たりとも静止画がないのに比べて、背景イラストが一切動かないという点が大きいように思いました。しかも今回は、声優さん方の演技や熱量が素晴らしいので、なおさら物寂しいのですね。

これが実際の舞台であれば、セットが動かなくとも「ライブ感の空気」というものが、観客に伝わってきて感じられるはずなのです。

そこで思いついたのが、背景画像全体に、空気の塵と光がわずかに動き続ける動画を重ね合わせることです。これにより、のっぺりとした印象がかなり軽減されて、実写とイラストが上手く馴染むようになりました。

それと同時に、朗読劇ならではの空気が、疑似的に感じ取れるというプラスの効果も与えられたように感じています。

■次回は、演出について

最初に、この二つの方針を思いつけたことが、「グリーンバックで合成した背景絵に、声優さんの演技を重ねる」という、この朗読劇がなんとか成立できた要因ではないかと感じています。

そして、この上にオンラインの朗読劇ならではの演出を、重ねていくことになったのでした。それを次回、最後に話してみたいと思います。

************


「殺戮の天使 6周年前夜祭」のアーカイブ配信は8月31日までございます。
詳細情報、チケットについては下記のリンク、もしくは「殺戮の天使公式Twitter」へ。