制作日誌

「6周年前夜祭」朗読劇の制作風景②

前回はシナリオの話をしましたが、今回から映像編集の方の話に入ります。
まず、今日はその当の編集される映像が撮影された、収録時のお話をしようと思います。

今回は私自身の工夫というより、声優さん達やスタッフの方々の工夫について語ることになりそうです。

■朗読劇の映像の方針

「グリーンバックでの撮影を行いましょう」

さて――前夜祭における朗読劇は、まず私に依頼に来るときには、既にそういう形での打診でした。
このご時世、リアルで開催できない中で「朗読劇」をするのであれば、実際の舞台とは違った方法をとる必要性がある。そんな考えから、この方針が考えられたそうです。

もちろん、私も、そうあるべきだと思ったので賛成です。

とはいえ――実際に皆さまに楽しんでいただくには、スタッフさん共々、色々と経験のない取り組みが沢山ありました。また、声優さんの演技もアニメ等のアフレコとはまた違う、今回ならではのものになっていると思っています。
今回は、そんな動画の撮影時のことについて、少しお話しします。

■撮影風景

当日の撮影は、冒頭でお話ししたように、後で背景などを合成するためにグリーンバックを前にして行うことになりました。

緑色の布の前にマイクが並び、声優さんたちが立つのは、なんだか不思議な感覚を覚えました。

映像に乗せる背景などの方針は、すでに私の頭の中ではある程度まで決まっていましたが、それでもなお、全部が緑に囲まれた空間というのは「これがこのあとどうなるのか想像がつかないぞ……?」という気持ちになるのですね。笑

声優さんたちも、アフレコ現場や舞台に立つ姿などは、きっとみなさんも映像で見知ったものだと思いますが、グリーンバックは少し見慣れない光景でした。彼らも、少しばかり不思議そうな様子だったように見えました。

――しかし、スタッフさんが何度も位置や映像、マイクの確認、そして脚本に合わせてのカメラの確認をしてくださったことで、自然と空気と身が引き締まっていきます。

私自身は、こういった生の制作現場でこんなにも確認や、質問をいただくことは演劇をやっていた学生時代以来、本当に久しぶりのこと。なぜか緊張してしまいガチガチになりましたが――ふと、懐かしくもなりました。

「……あ、これは舞台が始まる前の空気だな」と、思ったからかもしれません。

■声優さんたちの演技について

正直に言うと、声優さんたちの演技には、ほどんど心配をしていませんでした。
(前回話した新ミッション・モノマネだけは「無茶ぶりしちゃったかな……へへへ……」という、気持ちはありましたが、それはそれで楽しみでしたので。笑)

――なので、撮影開始前に声優さんたちにお願いしたことは、一つだけです。

『舞台の演劇として演じてほしい』

そして、声優さんたちは結果的にものすごく良い、臨場感にあふれた演技をしてくださいました。

――レイチェル役の千菅さんは、アニメよりも感情に少し熱を込めたものになっていることで、演劇という空気が映像に現れたように思います。

演劇というものは、他の演技媒体よりも、熱量を感じることで臨場感が出るものです。
ですが、すごいのはそんな風に熱を込めても、千菅さんがレイチェルそのもので、本当に違和感がないことです。
むしろ、「殺戮の天使」を最後まで見てくださった後の皆様の心境には、この少し熱を帯びたレイチェルことそが、しっくりとくるものだったのではないでしょうか。

――そして、ザック役の岡本さんは、セリフの演技力もさることながら、自身のセリフではない場所でも細かい演技をしてくださっていることに目を見張りました。

たとえば、注射器の部屋でキャシーが現れたとき、一瞬視線を上に向けていらっしゃったり、ラストのザックが倒れるシーンでは、そういった指示を出していないのにも関わらず、椅子に座り俯いて顔を上げない演技をしています。
これらは、その場を想像しないかぎりできない演技です。
他にも、細かい演技をしてくださっており、ハッとするところが沢山ありました。

――キャシー役の伊瀬さんは、もしかするとアニメよりも圧倒的な強者の雰囲気が出ていたのではないかとさえ思います。

演技の最中の雰囲気や動き、そして表情が、レイチェルとザックを見下ろして楽しんでいるキャシーそのものなんですよね。迫力に圧倒されました。

また、今回、ザックの過去のシーンで、孤児院の女性の役も引き受けてくださいました。

その役の演技は、アニメのキャラクターを演じるときなどとは異なる、とてもリアルな印象を与えるものです。
収録後、「大丈夫でしたか?もっと声色など変えた方がよいですか?」と伊瀬さんに聞かれましたが、むしろ生々しさが本当によかったので、そのまま使わせてもらっています。

そして、今回の現場では、撮り直しはほぼ一部でした。
そのおかげで、何度もリテイクを行った映像では得られない、非常に強い流れと勢いにあふれた雰囲気になったと思っています。その雰囲気は、次回に書く予定の、映像編集の方針にとても合致したものです。
しかも、その撮り直しも、こちらが直してもらおうと思ったシーンを、先に声優さんたちが申し出てくれたのでした。その上、なぜ撮り直すかの理由も、こちらと同じだったのです。

――それはつまり、シーンの意味、そしてキャラクターの意志を理解してくださっているということ。

正直、感動しましたし、演じる方への敬意を覚える出来事でした。

――この素晴らしい演技は、アーカイブ配信で何度もご覧いただけます。

見返すたびに新しい発見があると思いますので、ぜひ、ご覧いただきたといと思っています。

なお、アーカイブ配信は8月31日までございます。

■次回は動画編集について

――さて、こうして、スタッフさん達の丁寧な確認の上で撮影された、声優さんたちの素晴らしい演技を収めた動画を受け取ることになりました。
動画データが入った小さなハードディスクを手にしながら、緊張と責任感に震えましたが、最終的な演出・映像作成をすることも少しばかり胸がワクワクしたのを覚えています。

次回は、どのように動画を編集、そして演出していったのか、を拙いながらもお話していければなと思います!

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「殺戮の天使 6周年前夜祭」のアーカイブ配信は8月31日までございます。
詳細情報、チケットについては下記のリンク、もしくは「殺戮の天使公式Twitter」へ。