制作日誌

pixivFANBOX、始めます

 長らくやってみたい想いがあったのですが――pixivFANBOXを始めることにしました。

 ここに来て、それを決めたキッカケを、少し話そうと思います。

『霧雨が降る森』の頃

 そもそも――ふり~む!に旧版の『霧雨が降る森』を投稿した10年前、私は必死で自分のブログを更新していました。当時まだフリーゲームの周辺にはHP文化が残っており……告知サイトを回った上で、あとは自分のサイトで一生懸命に更新を重ねることで、やっとどうにか作品を知ってもらうような時代だったのです。

 ファンの方からのメールにも物凄い勢いで返事を返していました。以前のHPには「メールには返信しない」と宣言した文章がありましたが……それは当時毎日届いてくるメールたち全てに目を通して(←これは今でも行っています!)可能な限り全てに真剣に返信を続けた結果、社会人生活が崩壊する寸前になってしまい、あるときに「これはもう無理だ……」と諦めたからです。

 それは過剰に頑張りすぎてしまった自分への戒めとして、書いた文章でもありました。

 ただ、これは……『殺戮の天使』以降に知った方には、意外なエピソードかも知れないですね笑。
 その後、ご存じの方も多いように『殺戮の天使』ではゲームマガジンさんが公式Twitterでの告知を見事に引き取って下さり、ファンの人との接点は彼らに安心してお任せできました。その中で、いつしか「真田まこと」のイメージも、決して表に出ずファンとも関わらない謎めいた原作者……という雰囲気になっていったように思います。

 実際のところ、2016年のゲーム最終話配信からアニメ放映の頃の、あの『殺戮の天使』の状況というのは、一個人が受け止めるにはあまりに激しい熱気でした。ファンの年齢層も若く、作者が作品イメージとは異なる発信をしうる存在である事実に、慣れていない印象も受けました。公式の方々があんな風に世界観を大切に守りながら全て発信して下さったのは、本当にありがたい出来事だったと思います。

活動の本格的な再開に向けて

 さて、その上でなのですが――2023年は原点回帰で、私自身からのインターネット上での発信を再び増やしていこうと思います。

 それにあたり――昨年『霧雨が降る森』リメイク版を出した頃から、ずっと感じていることを書きます。
 私はこうした『殺戮の天使』の後の7年近い時間で、自分のゲームを遊んでくれるファンの方々との関係が曖昧なものになり、少々いびつにもなってしまったように感じています。

 私は、『霧雨が降る森』『殺戮の天使』と二作品続けて、2010年代のまだ無料文化が全盛だった時代に、ゲームを無料で発表しながらもメディアミックスで展開が拡大していくという、なんとも不思議な流れで商業化を果たした経緯があります。
 その幸運への深い感謝はありますが、こういう話は当時としても奇跡的なことでしたし、それから10年近い間に出版産業も大きく様変わりしました。よほどのことがない限り、もう同じことは起きません

 一方で2023年現在、イラストであれゲームであれ、個人のクリエイターが創作をする際に、作品それ自体からきちんとお金を受け取りながら活動するのは当たり前になりました。まさに私のいた場所ですが、フリーゲームのようなジャンルが下火になったのが、その最もわかりやすい例です。

 私自身はフリーゲームの、あの文化にノスタルジーや美しさを感じます。自分の表現を見て欲しくて、見て欲しくて仕方ない人たちが、それを衝動のままに出す――今でも、とても好きです。
 一方で、当時から一つだけ作品を出して消えていく人も多く、とても残念に思っていました。もちろん、その理由は、ゲームを無料で配布しながら社会生活を営むことが、とても困難だからです。作ったことがある方には、分かってもらえると思います。

 そう考えたときに――今やSteamやPatreonなどで世界中のインディーゲームの作家が、きちんとお金を受け取りながら継続的に活動するのが「当たり前」になった状況は、とても真っ当なのではないか、と思います。

活動再開にあたり

 そういう中で、私自身も本格的に「活動再開」をしていくにあたり、ここまでの活動や発信とは形を大きく変えていかねば――届くものも届かなくなると、切実に思いはじめています。

 例えば、昨年の『霧雨が降る森』朗読劇は、関係者の方々がTwitterでリメイク発表時、主にフリーゲームのファンの人たちがRTしてくれた数字を見て、とても大きな動きをしてくださったものでした。


 しかし、私自身の発信は、それに応えられるものではありませんでした。終了後でさえも、「朗読劇があったことを知らなかった」という声が結構な頻度で届いており、あれだけの豪華な内容の舞台を生みだして下さった方々と、その存在さえも見逃してしまった人たちに、とても申し訳ない気持ちになりました。

 同じことは、ゲーム販売についても感じています。今でも「リメイク版、あるんですか」「リメイク版の初報は見たけど、もう出たんですか」という声が定期的に届きます。私自身の発信の弱さにより、届くべき人に届いていない状態が、生まれてしまったのだと思います。皆さまの協力を仰ぐことも出来たのにな……と、今更ながら思ったりします。


 最近のInstagramの開設や今回のFANBOXのスタートは――こういう状況に自分が陥っているのを深く認識した上で、2023年における作家として、再び自分なりに一からスタートを切り直す第一歩のつもりです。

FANBOXの内容について

 FANBOXの内容については、特設ページをこの公式HP内に作成しましたので、そちらをご確認下さい。
 一応、そのページに入れている画像を、こちらにも貼っておきます。

↑上記の画像は、とても小さく貼っていますので、気になった方は以下のリンクに飛んでください。

 2023年は、まずは様々な試行錯誤を進めていこうと思いますが、このFANBOXはその実験の拠点にしようかな……と思っています。

 新作に向けて、テスト的に制作したゲームを公開しても面白いかなと思っていますし、作品とは必ずしも関係のない自分自身のパーソナルな発信も試していこうと思います。もちろん、『殺戮の天使』や『霧雨が降る森』のメディアミックス情報なども、公式ファンブック以上に濃い内容でリアルタイムにお届けしていこうと思います。

 基本的には作品のめちゃくちゃに濃い情報や、作品の制作過程を全員で楽しんでいける場所であると思っていただければいいかと思います。もちろん、お金を頂くだけの価値はなければ……と思ったので、プランの内容はかなりてんこ盛りにしてみました。

 ぜひ興味のある方は、こちらのFANBOXのプランを一読してみて下さい。いつもサポートいただいているバカー社さんのお力も借りられることになったので、リターンは結構、頑張っています。

 ただ――ことファンコミュニティのリターンという観点で言うと、あまり具体的な「お得感」は本質ではない気もしています。

 今回始めるにあたって、私自身でもこういうサービスを色々と調べてみたのですが、様々な場所で――会員限定の内容を充実すること(も大事だけど、それ)以上に、普段のオープンな場での活動がもっと充実することこそをファンは望んでいる――という話が語られていて、私自身はこの視点にとても納得しています。

 ですから、本当に大事なのは皆さまからの会費で、より私自身が制作に集中して、ハイクオリティな作品を出せるように活動をしていくことであるのは、肝に銘じようと思います。

 ぜひ私自身の活動再開での試行錯誤に、興味を持っていただける方には、このFANBOXでお付き合いをいただければ嬉しいです。

 よろしくお願い致します!