制作日誌

朗読劇『霧雨が降る森』と、感謝の気持ち※2022/1/10追記

 先日、朗読劇『霧雨が降る森』へ行ったことをブログに書かせていただきました。ただ、まだその感想を表に出せていなかったので、今日はそれを書きたいと思います。

 ただし、その前に――!

 今回の朗読劇のオリジナルグッズが好評につき、販売期間を12月一杯まで延長することになって、昨日の夜から販売を再開したそうです。
※2022/1/10追記 再販売期間は3月31日まで延長しているとのことです!

 観劇に来ていただいた方はご存じのように、本当に『霧雨が降る森』らしいグッズばかりです

 どれも本当に作品をよく理解している人が作っていて、私自身もワクワクするグッズになっています。例えば、「須賀の筆談セット」は阿座河村資料館の文字が入っており、まるで実際の資料館の備品のようです。これらは本当にKADOKAWAのスタッフの人たちが、丁寧に一つ一つ拘って作ってくれたものです。
 ちなみに、来場者限定の台本セットには阿座河村資料館の館内マップも付けていただいており、そちらも本当に凝った企画でした。

 『霧雨が降る森』の世界観が感じられる今回限りのグッズたちですので、ぜひ、この最後のチャンスで手に取っていただけると嬉しいです。


 実は、今回の舞台はKADOKAWAのプロデューサーの方が、たまたま『霧雨が降る森』を知る機会があって、作品を気に入ってくれて「何か出来ないか」という話を頂いたことから始まっています。そこに、ちょうど偶然に準備中だったリメイク版の話が被さり、今回のような大きなイベントに繋がりました。

 こういう経緯から始まった企画なので、上のグッズも舞台もとても作品への愛に溢れた内容になっていて、私自身も感動しました。

■はじめて脚本を受け取った時

 とはいえ――そこで選ばれた「朗読劇」という表現は、あまり馴染みがない人も多かったのではないかと思います。セリフを読むだけのイメージだった人もいるかもしれません。

 しかし、観劇された方は目撃されたように、今回の朗読劇『霧雨が降る森』はそのイメージとはだいぶ違ったのではないでしょうか。


 私自身は、朗読劇を観に行ったことは何度もあり、単にセリフを読み上げるものでないことは知っていました。ですが、今回の舞台ではコンテンポラリーダンスが入る見たことのない演出もあり、声優さんの演技も迫真に迫っていて、とてもクオリティが高い内容でした。

 事前に脚本の監修をさせていただいており、舞台イメージや演出イメージを丁寧に教えてもらっていましたが、実際に見た舞台は――想像以上のものだったと感じました。

 なにより、今回は昼のシオリパート夜の須賀パートがあり、二つは同じ話でありながら、まったく違う内容になっています。

 そして、両方見ることによって、一つの作品になっているのです。

 今回の監修で、最初に受け取った脚本はシオリのパートでした。

 元のストーリーを1時間半に収める作業はきっと大変なはずなのに、大事な箇所をしっかりと書いてくださっていて、作品に愛情を持って書かれていることが、その脚本を読んだ瞬間にわかりました。

 次に須賀のパートの脚本を受け取ると、「これは絶対に二つ見る価値があるものだ」と確信できるもので、とても感動したことを覚えています。

 ――旧版のゲームでのみ『霧雨が降る森』に触れていた人は、まだ知らない彼の側面を知ることが出来ると思ったからです。

 あとで知ったことですが、今回の脚本家の方はかつて『霧雨が降る森』が好きで、元々この作品をよく知ってくれていたそうです。

■舞台当日開演前

昼の「ところざわサクラタウン」

 そして迎えた、当日――私は、関係者席に座りながら、自分が出演するわけでもないのに、心臓がドキドキして吐きそうなほどの緊張を感じていました。

 目の前の席が埋まっていく中で、「ああ、『霧雨が降る森』の朗読劇を見に来てくださった方々が、こんなにも座っているんだ」と不思議な気持ちでした。

 今まで『霧雨が降る森』はこのようなリアルイベントは多くありませんでしたので、来場してくださったお客さんを見つめながら、感動と緊張が交錯し、パニック感が生まれていました。開幕までの時間、脳内がひたすらグルグルしてたように思います。

 会場の照明が消え、舞台に明かりがついた時は、その緊張がピークに達し、手をギュッと握っていました。

 ですが、その後は、あっという間に舞台に引き込まれ、特に夜の公演ではずっと釘付けでした。

■実際の舞台について

 まず、ダンサーや照明、映像、それぞれの演出がとても素晴らしかったです。
 朗読劇にダンスを合わせる効果は、想像した以上に舞台に良い印象を与えていように思います。場面のメリハリを産んでおり、そのシーンの怖さや悲しさを引き立てていました。
 特にダンサーの方が赤い傘を持ち、役者の方を隠すダンス演出はとても印象的でした。

 また、何より役者さんの演技や声も、登場人物に非常に合っており、感動してしまいました。ことりおばけ役は怖く迫力があり、望月巡査や佐久間は「わぁ」と声が出るほど本当にイメージ通りでした。特にシオリは彼女の優しさと芯の強さを感じさせ、須賀は胸が苦しくなるほど――彼という人を表していました。

 また、朗読劇ということで、皆が複数の役を兼任してこなしており、感心すると同時に、いろんな演技を見られること自体が楽しかったですね。

 特にことりおばけ役の大原さやかさんや日笠陽子さんは、「何人演じてくださっているのだろうか」と思うほど沢山の役を兼任してくださっていました!

 あと……個人的には、望月巡査役の赤羽根健治さんの少年の声が妙に癖になっています。

■昼のシオリパート、夜の須賀パート

夜の「ところざわサクラタウン」

 監修をする上で、二つのパートの違いや、脚本・演出などは知っていましたが――実際に二つのパートを見ることで、「二つで一つの作品」であることを強く感じました。

 昼パートで久保田未夢さんと瀬戸麻沙美さんが演じていたシオリは、本当に彼女の優しさや強さを表現してくれていたのですが、そんなシオリへの感情を、昼パートの須賀は言葉で表すことができません。

 しかし、夜のパートではその須賀の感情が露になります。
 今までゲームでは「感じること」しかできなかった須賀の内面が、衝撃的なほど表現されたのです。

 須賀役の濱野大輝さんが、須賀として演じてくれた、彼の叫びや慟哭は、本当に胸が苦しくなるほど切実に須賀を表してくれていました。

 ――演じ終わった後の役者さんの話では、泣いているお客様もいらっしゃったようです。

 それほど、心に語りかけてくる演技・舞台でした。

 また、シリアスな中にも、時に「ふふっ」とするような場面もありました。例えば、シオリが須賀の料理を完食する場面で須賀が心の声で「今日は上手に出来たんだ」と言う場面は、とてもくすぐったい気持ちになりました。

 ――昼夜二つのパートが終わった後、多くの方が興奮した様子で会場を後にしていきました。

 そして、Twitterなどで感想を書いてくださり、そのどれもが、とても暖かく、私と同じようにたくさんの想いを抱いてくれていたことが分かりました。

「みんな見てほしい」そう語りかけてくださってる方もいて、とても誇らしく、ありがたい気持ちでした。

 また、後日にはこちらにも感想を送ってくださる方もいて、この『霧雨が降る森』朗読劇という体験を共有できたことを、本当に心から嬉しく思いました……!

■皆様に感謝を

 こんな素晴らしい舞台を作り上げてくださった朗読劇チームの皆さんには、感謝しかありません。
 この舞台を観劇したとき、宝物のような思い出が出来たように思いました。

 会場に足を運んでくださった方々にも心から感謝します。

 9年も前にリリースされた『霧雨が降る森』を、今でも愛してくださる方がいることは、私にとってものすごい喜びと、感動を与えてくださいました。

 目まぐるしく変わるインターネットの環境で、いろいろと考えることが増えましたが――やはり皆さんが楽しんでいる姿や、たくさんの感想を言ってくださることが本当に励みになります。

 実際に、皆様のtweetでの感想のおかげで、今回は終演後に配信で見る人がとても多かったと聞きました。
 ゲームのような作品は私一人が頑張れば成り立ちますが、こういう舞台や漫画やアニメなどの展開は、最近ではもう皆さまがSNSで声を上げてくれなければ動きようがないものです。こういったお力添えがあることによって、「作品」は活動を続けられる力をいただけるのです。

(昨日のブログにも書かせていただきましたが、私の作品に限った話ではなく……ぜひ過度にネタバレを恐れずに、感想や想いを発信していただいてよいのでは、と思います……! ネタバレをファンが気にして声にしないことで、展開が消えてしまっている作品、最近は結構あると思います)

  

  

 朗読劇チームの皆様、
 観劇してくださった皆様、
 本当にありがとうございます。


 よろしければ、皆さまもぜひ今後とも『霧雨が降る森』の世界に、お付き合いいただけると幸いです!